2026年7月6日、クレジットカードの決済代行会社「全東信」が大阪地裁に破産を申請し、そのまま手続きが始まりました。
負債総額は、報じられている数字だけでも1000億円を超えています。
今年、日本で起きた倒産のなかでは最大規模です。
「決済代行の会社が潰れて、カードの売上が入ってこなくなった」
全東信の端末を使っていた飲食店やスナックから、こうした声が相次いで報告されています。
日本飲食団体連合会も緊急の声明を出し、加盟店に対して端末の利用中止と未入金額の集計を呼びかけました。
- 飲食店・スナック・キャバクラなど夜間業種を中心に、カード売上を早め(週2回・月6回)に立て替えて支払う「早期入金サービス」を展開していた
- 加盟店は20万店を超え、業界内では「審査に通りやすい」ことで知られていた
- 2024年、他人名義で不正に加盟店契約を結んでいたとして社員が逮捕され、法人としても書類送検された
- その後の調査で、少なくとも20年前から決算を粉飾していた疑いが浮上している
- 破産により、加盟店の未入金の売上は「一般の破産債権」となり、優先的に返してもらえる保証はない
影響を受けた店舗の中には、金額自体はそこまで大きくないケースもあるようです。
それでも、毎月の家賃と仕入れの支払いは待ってくれません。
「入ってくるはずだったお金」が、ある日突然「戻ってくるかわからないお金」に変わる。
これがどれだけ怖いことか、当事者の声を追うと、数字だけのニュースとは全然違う重みが伝わってきます。
なぜ「入ってくるはずのお金」が消えたのか
ここが今回の一番大事なポイントです。
全東信がやっていたのは、お店に代わってカード会社から売上金を先にもらい、それをお店に立て替えて渡す仕組みでした。
ところが、加盟店から預かるべきそのお金が、会社自身の運転資金と分けて管理されていなかったとみられています。
つまり、お店の売上金なのに、会社の財布と一緒くたになっていたということです。
だから会社が潰れると、お店のお金も一緒に破産財団の中に飲み込まれてしまう。
優先的に返してもらえる保証はなく、他の債権者と同じ列に並ぶことになります。
実際、こうした一般債権の回収率は、数パーセントにとどまるケースが多いとも言われています。
もう一つ見逃せないのが、資金繰りの構造です。
週2回・月6回という業界でも異例の早さでお店に現金を渡していたということは、その分、会社自身が銀行などから相当な借入をして先に立て替えていたということです。
コロナ禍で主要顧客の飲食店が休業・時短に追い込まれ、売上が半分近くまで落ち込んだとき、この借金の重さだけが変わらず残りました。
資金繰りが厳しくなればなるほど無理をして、無理をすればするほど審査を甘くして加盟店を増やし、それがさらに不正契約という形で表面化する。
そういう悪循環だったのだろうと思います。
これは「ファクタリングが危ない」という話ではない
ここは正確に書いておきたいところです。
全東信がやっていたのは、厳密にはファクタリング(売掛債権の買取)ではなく、クレジットカード決済代金の立替という別の仕組みです。
ただ、「請求が確定する前に、先に現金を受け取れる」という機能としては、お店側から見ればファクタリングとほぼ同じ役割を果たしていました。
だからこそ、この事件から学べることは、ファクタリングを利用する側にとってもそのまま当てはまります。
本来、正しく運営されているファクタリングでは、買い取った売掛債権はファクタリング会社の資産としてではなく、取引として明確に分離して扱われます。
お店やあなたの会社から見て「このお金は誰のものか」が、契約上も実務上もはっきりしている状態が正常な形です。
今回の全東信のケースがどこまでこの原則を欠いていたのかは、今後の破産管財人の調査で明らかになっていく部分もあります。
それでも、「資金を先に渡してくれる会社」だからといって、お金の管理体制まで安全とは限らない、ということを、この事件ははっきり示しました。
この事件から見えてくる、資金調達先の選び方
売掛金や入金を、会社自身の運転資金ときちんと分けて管理しているか。契約書や説明の中で、この点を明確に答えられる会社かどうかは、一つの判断材料になります。
どんなに条件が良くても、資金調達の窓口を一社だけに絞るのはリスクです。今回、全東信一社に決済を集中させていた加盟店ほど、影響が大きくなりました。複数の選択肢を持っておくことが、結果的に一番の保険になります。
入金の早さや審査の緩さは、お店にとって魅力的に見えます。ただ、その裏側で提供会社がどれだけ無理をしているかは、外からは見えません。極端に条件が良すぎる場合は、一度立ち止まって考える価値があります。
設立年数、資本金、財務状況の開示姿勢。地味なポイントですが、いざというときにここの差が出ます。
まとめ
全東信の破産は、決して他人事ではありません。
飲食店に限らず、「先に現金を受け取れる仕組み」に資金繰りを頼っている会社は、業種を問わずたくさんあります。
大事なのは、その仕組みを使うこと自体をやめることではなく、預けるお金がどう管理されているか、一社に頼りきりになっていないかを、普段から意識しておくことだと思います。
「一つに頼りすぎない」という当たり前のことを、今回の一件はあらためて強く思い出させてくれます。
本記事は2026年7月9日時点で報道・公表されている情報をもとに構成しています。負債総額や粉飾決算をめぐる調査結果は今後の破産管財人による調査で変わる可能性があります。最新の状況は、帝国データバンク・東京商工リサーチなど公的な報道機関の情報をあわせてご確認ください。